「私が辞めたら、現場が回らなくなる」と牽制してくる人に、管理者はどう向き合えばいいのか
「今自分が辞めたら、この現場は回らなくなりますよ?」
みたいなことを言ってくるスタッフに、どう向き合えばいいのか?
について少し書きます。
まあ、わりといますよね。
こうやって上司や会社を牽制してくるスタッフさん。
あなたの現場にもいませんか?
もちろん本当に会社から必要とされて、健全な気持ちで現場を支えてくれる人もいます。
長く働いて、ご利用者さんのこともよく知っている。関係性も良好。
そういうスタッフさんがいること自体はとてもありがたいことです。
でも、そのありがたさを盾にして、上司や会社の顔色を伺わせてくる人もいます。
「今、私が辞めたらどうするんですか?」
「この仕事、他にできる人いませんよ?」
「今抜けられたら、みんな困りますよね?」
みたいな感じで、牽制してくる。
これを言われてしまうと、管理者としてはかなりしんどいです。
というか、正直面倒です。
ただでさえ人手不足だったりするので、こういうことを言われると「さすがに今辞められるのは困る」と思ってしまう管理者がいるのもわかります。
(そして、その困り顔が彼らにちゃんと伝わってしまいます)
とはいえ、
ここでその人の機嫌を取ってしまうと、組織やチーム全体は危ない方向に進んでいくことがあります。
というのも、
「辞める」をチラつかせれば、管理者や会社が言うことをきく、こちらの言い分を通してくれる、向こうが折れてくれる、といった“成功体験”を与えてしまうからです。
これは、運営上ちょっと怖いことです。
気の弱い管理者や、就任して日が浅い管理者のいる現場では、古参スタッフに仕切られてしまっている(実際、言いなりになっている)というケースもありますが、ほとんどはこの流れから来ていると思います。
(気の弱さを「優しさ」と誤解されてしまっている場合も多い)
先に結論から言うと
仮に「今自分が辞めたら、みんな困りますよ」と牽制してくるスタッフが、本当に辞めたとしても、大丈夫です。
現場はちゃんと回ります。
もちろん、まったく困らないというわけではありません。
しばらくは、シフト調整とか送迎対応とか、タフな勤務が続くことはあります。残ったスタッフにいつも以上に負担が掛かってしまうこともあります。
でも、多くの場合、その大変さは一時的なものです。
次第にそのバタバタした日々にも“慣れ”ていきます。
だから、長くても数ヶ月、早ければ翌月には現場で生じた欠員の動揺は少しずつ落ち着いていきます。
と、まあ、実際はそんな感じです。
さらに正確に言うなら、むしろ牽制してくる人がいなくなったことで、以前より現場全体の雰囲気がよくなって、環境改善になった、なんてこともあります。
ずっと部屋の真ん中に大きな荷物が置いてあって、その部屋に入ってすぐの頃は「なんだろ、邪魔だな」と思っていた。
でも毎日そこに荷物があると、だんだんそれが普通になる。
ある日、誰かがその荷物を整理してどかしてみると、「え、こんなに動きやすかったの?」と驚く。
そんな感じです。
「(この人が)いないと困る」と思っていた人がいなくても、オペレーションに大きな支障はなく、むしろチーム全体の連携を阻害していた、ということはよくある話です。
では、なぜ彼らは「自分がいなくなったら困るぞ」と牽制したくなるのでしょうか?
僕は、大きく3つあると思っています。
1つ目は、情報を独占して、現場に”聖域”を作っているからです。
介護現場では、ご利用者さんごとの細かな対応の違いがあります。
「Aさんは朝の声かけを少しゆっくりすると機嫌がいい」とか、「Bさんは入浴時にこの順番で脱衣すると安心されます」とか、「Cさんは昼食のとき、この席だと落ち着きます」とか。
こうした細かい情報(知識・コツ)は、スムーズに現場を回す上でとても大事です。
そして、本来であればこういった情報はチーム全体で共有されるべきものです。
ところが、これをあえて自分だけで抱え込むわけです。
その結果、
「Aさんの対応は、私じゃないと難しいです」
「この入浴機器は、僕がいないと扱えない」
「このご家族とのやり取りは、自分が一番わかっている」
みたいな感じで、その情報の中に他のスタッフを入れようとしない。
もちろん、それ相応の経験があるからこそわかることもあると思いますので、そこは否定しません。
ただ、その経験から得られた情報(知識やコツ)を、チーム内に渡さないとしたら、それって本当にベテランの仕事と言えるのか?
と、いつも疑問に思ってしまいます。
情報や知識、コツや工夫はチーム全体に共有されてはじめて、会社の資産になります。
「属人化」という言葉をものすごくざっくりいうと、「その人にしかできない仕事になっている状態」ということです。
一見すると、その人がとても優秀そうに見えますが、会社からその光景を見ると、実はかなり危ないわけです。
なぜなら、次第にその人はこう思うようになるからです。
「自分は重要な役割を担っている特別な存在だ」と。
こうして少しずつチームのバランスが崩れていくわけです。
2つ目は、自分の存在価値を周りの反応で確認しているからです。
これは少し言い方が難しいのですが、「今自分が辞めたら困るでしょ?」と脅しのような牽制をしてくる人ほど、心の奥では不安を抱えていることがあります。
「自分は本当に必要とされているのか」
「自分の価値はちゃんと認められているのか」
こういう不安です。
だから、「自分が辞めたらどうなるか?」と煽ることで、周りが慌てるかどうか、会社が引き留めてくれるかを見ているわけです。
周りが慌てれば慌てるほど、「やっぱり自分って必要なんだ」と感じられます。
これはもう、親の気を引くためにわざとおもちゃを投げる子どものような心理だと思いますが、でも、やっていることは周りをコントロールする行為です。
そして、何よりも、本当に存在価値のあるスタッフなら、こういう牽制や威嚇をまずしません。
むしろ逆です。
「自分がいなくても(休んでも)困らないようにしておく」
「この機械の使い方を新人でも出来るように共有しておく」
「次から誰でもできるように、メモに残しておく」
こうして情報を共有し、積極的に後輩を育てようとします。
つまり、
「私がいないとダメです」と言う人より、「私がいなくても大丈夫にしておきました」と言える人、そして「自分にしかできないこと」ではなく、「周りもできるようにすること」に価値を置いている人の方が、会社にとっての存在価値は高くなるはずです。
3つ目は、属人化を許してしまう組織の仕組みがあるからです。
ここが一番大事かもしれません。
「辞めるぞ〜」と牽制してくる人に出会うと、つい個人の問題として見てしまいます。
(もちろん、本人の言い方や態度に問題があることはあります)
でも、それだけで終わらせると、また同じことが繰り返されます。
なぜなら、
そうやって特定の人が牽制できる環境を、会社側が作ってしまっているからです。
特定の人しか知らない情報がある。
特定の人しか触れない業務がある。
特定の人しか外部対応の流れを知らない。
特定の人しか営業先との関係性を持っていない。
たとえば、こういう状態をいくつも放置していると、その特定の人になった人は、だんだん強くなってしまいます。
これはもう、本人の能力が高いというより、会社の穴がその人の武器になってしまっている状況です。
もっと乱暴に言うと、「会社の仕組みが弱いから、個人が強く見えてしまう」ということです。
この構造も多くの現場で起きていることです。
では、どう向き合えばいいのか?
まず、誰かがいなくなって困るのだとしたら、それはその人のせいではなく、仕組みの脆弱さだと気づくべきです。
人に勝とうとするのではなく、仕組みを改善するべきです。
介護現場に必要なのは、一人の圧倒的なカリスマ力ではありません。
すごい人に頼らなくても、普通の人がちゃんと動ける再現性の高いチームにしている方が強いです。
誰かが居なくなったら(辞めたら)止まる現場ではなく、誰が休んでも何とかなる現場に変えていくことです。
申し送りで出た対応をクラウド上で共有して、全スタッフが確認できるようにするとか、特殊な機器の操作手順をスマホで30秒撮影して、動画サイトで限定公開にするとか。
少額で使い勝手のいいソフトやアプリ、ツールは山ほどあります。
文字だらけの分厚いマニュアルなんていりません。
とにかく、情報を個人の頭の中からチーム(の資産)に移動させる。
その視点でいいんです。
その小さな情報移動の積み重ねが、やがて特定の人が持つ間違った存在価値を確実に暴落させてくれます。
少しずつ、でも確実に。
「一人にしかできない◯◯」を減らしていくことです。
というわけで、
「私が辞めたら現場が回らなくなる」と、牽制してくる人の顔色を伺うのはもう終わりにしてください。
そして、本当の意味で努力してくれる人、頑張ってくれる人が楽しく仕事できるように「仕組み」を作ることに頭と時間を使いましょう。
それでは、また!
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