値上げするか迷ったとき比べるべきは・・・
こんにちは、藤見です。
前回は、「値上げを避ける優しさが、別の誰かを苦しめていないだろうか」という話を書きました。
価格を据え置く、もしくは無償提供を続ける、たしかに利用者さんの金銭的な負担は増えません。
ただ、負担そのものがどこかに消えるわけではなくて、
会社が費用を負担するのか、管理者が残業して埋めるのか、スタッフが少ない人数で現場を回すのか、設備の入れ替えや採用を先送りするのか、
その行き先が見えなくなっているだけで、誰かがどこかで引き受けているケースは頻繁にあります。
では、そこまで分かったうえで、
実際に価格を上げるかどうかは何を基準に決めればいいのでしょうか?
今回はその続きです。
値上げすれば正解、という話ではない
ひとつ前の記事を読んで、
「それなら無償サービスはすぐに有料化した方がいい」とか
「赤字になっているなら、値上げをした方がいい」
と感じた人もいるかもしれません。
ただ僕は、何でも値上げすればいいとはもちろん思っていません。
価格を上げたことで離れてしまう人が一定数は出るかもしれませんし、ご家族から理由を聞かれるかもしれませんし、ケアマネジャーさんから「前より紹介しづらくなった」と言われる可能性もゼロではありません。
サービス内容によっては、無償提供をしていること自体が集客の目玉になっていたり、リピートにつながっていることもあるかもしれません。
なので、「値上げをするのが正解」で「据え置くのは間違い」です。
という単純な話ではないんです。
大事なのは、どちらを選ぶにしても目の前の感情だけで決めないことだと思います。
値上げをした後の景色が怖いから、そのままにする。
コストが上がったから、反射的に値上げをする。
どちらにしても、これでは判断が少し雑になっていると思います。
価格を見直すときに意識しておきたいのは、「上げるか、上げないか」だけではなく、その判断をした先にある2つの未来です。
半年後と一年後を想像してみる
一つは、価格を見直した場合の半年後や一年後です。
もう一つは、価格を据え置いた場合の半年後や一年後です。
まず、価格を見直した場合はどうなるか
・一部の利用者さんが離れてしまう可能性はあります。
・一人ひとりに説明する時間がかかるかもしれません。
・十分に納得してもらえず、関係が切れてしまうかもしれません。
これは、きちんと見ておかなければいけないリスクです。
一方で、必要な収益を確保できれば、
・スタッフの人員配置を維持しやすくなります。
・送迎車や水回り設備の修理も定期的に行うことができます。
・新しい人を採用したり、研修や教育にお金を使う余裕も生まれます。
今提供しているサービスを、今後も無理なく続けられる可能性が高くなります。
では、価格を据え置いた場合はどうか
・目の前からは一人の利用者も離れないかもしれません。
・ご家族やケアマネジャーさんからも反発されることはありません。
・誰かに説明する手間もかかりません。
とりあえず、その場は丸く収まります。
なので、ここだけを見るとすごく平和な気がします。
でも、その半年後や一年後に視点を移してみると、少し景色が変わってきます。
・管理者が現場の穴を埋めるために走り回っているかもしれません。
・人件費を増やせず、少ない人数でシフトを回しているかもしれません。
・壊れかけた設備を「まだ使える」といって修理を先延ばしにしているかもしれません。
・新人を採用しても、十分に関わる時間が作れず、放置してしまう可能性もあります。
こう考えていくと、価格は単なる金額だけの話ではなくて、半年後や一年後にどのような現場を残すのかという話にもなると思います。
利用者数と売上だけでは足りない
多くの経営者が真っ先に気にするのは、「一体、何人くらいのお客が離れてしまうのか」だと思います。
利用者数が大きく減ってしまうと、たとえ価格を上げたとしても全体の収益が下がってしまう、なんてオチもあり得るからです。
とはいえ、利用者数と売上を指標にするのも危険です。
見ておいてほしいのは、そのときの現場がどのような状態になっているかです。
・半年後のスタッフはどのような表情で働いているのか。
・一部の人ばかりが送迎や入浴介助の穴埋めをしていないか。
・休憩時間を削って記録業務を書いていないか。
・新人を採用をしても教育する時間がなく放置していないか。
・修理が必要なのに会社に黙って使い続けていいないか。
・会社はその状況を分かっていながら後回しにしていないか。
価格を据え置いたことで、利用者さんが一人も離れなかったとしても、スタッフが次々に疲弊して離職や退職を繰り返していけば、安定して事業を続けられません。
逆に、価格を見直したことで、一部の利用者さんが離れたとしても、必要な人員を配置することができて、サービス力や質を維持することができるなら、その判断にはちゃんとした意味や意義があります。
目先の利用者数の増減ではなく、現場が今の体制を維持できるかまで見る。
ここはけっこう大事なポイントだと思います。
根拠のない楽観も、根拠のない恐怖も危ない
とはいえ、
「きっと今の利用者さんなら、きっと理解してくれるだろう」
「少しくらい値上げしても、ほとんど影響は出ないだろう」
と根拠もなく楽観しないようにしてください。
価格を上げた時の影響は、しっかり想定しておく必要はあります。
たとえば、
・現在そのサービスを利用している人は何人いるのか。
・特に負担が大きくなりそうな人は誰なのか。
・同じ地域の他の事業所はどんな条件で提供しているのか。
・有料化して得られる収益で具体的に何を維持するのか。
こうしたことを確認せずに、「たぶん大丈夫」で進めてしまうのは怖いです。
ただ、その逆も同じくらい怖いです。
「値上げしたら、みんな離れてしまうかもしれない」
「ご家族からの反発が強くなるかもしれない」
「ケアマネジャーさんが紹介してくれなくなるかもしれない」
そう考えて、何も調べないまま判断を先送りするのも、同じくらい危険なことです。
・誰かに相談したり聞いたりもしていない。
・利用者さんの負担額も計算していない。
・同業他社の価格も調べていない。
なのに、頭の中では悪い方の未来だけが完成している。
これ(↑)価格の話題になった時に割とよくあることです。
怖いから据え置くでもなく、たぶん大丈夫だから値上げする、でもない。
必要な情報を集めて、二つの未来を比べる。
当たり前といえば当たり前の話なんですが、価格の話になると、この当たり前が抜けやすくなるので気を付けてください。
価格の見直しは、関係を整理することでもある
このように考えてみてはどうでしょうか?
自社はこれから、どのようなサービスを、どのような条件で、誰に提供していくのか?
そこを整理する機会として考えるわけです。
「無償であることを前提に成り立っている関係」と、「必要な費用を含めて、サービスの価値を理解したうえで、お互いに納得して成り立っている関係」は同じではありません。
もし今後、価格の話が出たときは、まずこの三点を考えてみてください。
一つ目は、そのサービスを今の条件のまま、一年後も続けられるのか。
二つ目は、価格を据え置いたり無償提供を続けたりすることで、実際には誰が負担を引き受けているのか。
三つ目は、価格を変えない理由が本当に利用者さんのためなのか。それとも、説明して反発されることが怖いからなのか。
この三点を考えるだけでも見えてくる景色は変わると思います。
値上げすることが正しいわけでもないし、値上げしないことが優しさとも限りません。
大切なのは、目の前の反応だけではなく、その判断によって誰が負担を引き受け、半年後や一年後にどのような現場が残るのか、そこまで考えることです。
というわけで、
価格を見直すときに比べるべきなのは、値上げするか、据え置くかだけではなく、それぞれの判断をした先にある二つの未来まで考えましょう、という話でした。
長くサービスを守っていくための判断は、決して簡単ではないからこそ、嫌われないための判断ではなく、より続けられる状態をつくるための判断をしていきたいものです。
それでは、また!
